逃げ道を探すには遅すぎた

『ねぇ、二人は何年生まれ?』

すると二人は同時に答える。

『1855年』

信じられない。肌がゾワリと粟立つ。今は2024年で二人が言った西暦は約二百年くらい前のもの。十九世紀だ。でも二人の目は嘘を言っているように見えない。

『どこ出身なの?』

『イギリスのロンドン』

頰を汗が伝う。こんなこと現実にあり得るのか。私は動揺を落ち着かせるために深呼吸をする。そして、二人に言った。

『落ち着いて聞いてほしいの。ここは二人の生きている時代じゃない。二百年くらい先の未来の日本の東京という街なんだよ』

『えっ……』

二人の表情が一瞬にして曇った。



タイムスリップをしたんだよと二人に教えて数十分後。私たちは今、喫茶店にご飯を食べに来ています。

『すっげ〜。何書いてあるかわかんねぇけど、うまそうなもんばっか!』

メニュー表を見てシャロンは目を輝かせている。その隣でウィリアムは『この中から好きなものを選んでいいんですか?』と少しオドオドしながら訊ねた。私は笑顔で言う。

『二人とも、好きなものを頼んでいいよ〜!』