逃げ道を探すには遅すぎた

メモ用紙を片手に商店街へと向かう。その時だった。私の横に豪華な馬車が止まった。明らかに庶民が乗るものじゃない。貴族のものだ。でもここは貴族が来るようなお店なんてない。

少し警戒していると、馬車のドアが開いて三人の女性が降りてくる。三人とも豪華なドレスを着て、高そうなアクセサリーを身に付けている。三人の目には明らかに敵意があった。私が後ずさると、一人が口を開く。

「あなたね?ウィリアム様が最近こっそり会っているとかいう女は」

睨み付けられて正直怖いが頷く。ガッツリメイクのせいで年上に見えるが、多分三人と私はそれほど歳は変わらないはずだ。

「そ、そうですけど」

「何なのこのちんちくりん。子どもじゃありませんこと?」

「おまけに東洋人だなんて。ウィリアム様はどうしてこんな女の元に通っているのかしら。あなた、ウィリアム様を脅しているの?」

首を横に振る。話が通じなさそうなタイプだけど、とりあえず何か言わなきゃと思い、口を開く。

「私は子どもじゃありません。もうすぐ二十歳です。私とウィリアムは幼い頃の知り合いでーーー」