逃げ道を探すには遅すぎた

シャノンはそう言った後、トイレのある方へ走って行ってしまった。顔色があんまりよくなかったし、飲み物でも貰っておこうかな。

ジュースの入ったグラスを貰って壁際に。……こうして見ると本当に眩しい世界だ。みんな上品で宝石のアクセサリーを身に付けて、ここにいるのはみんな貴族なんだな……。シャノン、早く帰って来て……。

とりあえずジュースを飲む。さっぱりしていておいしい。これはグレープフルーツのジュースだ。もう一口飲む。ジュースを飲んでいると、貴族のご令嬢の会話が聞こえてきた。

「そういえば、さっきメレディス家の馬車をお見かけしましてよ」

「まあ!ということは、今夜こちらにウィリアム様がお越しになるのかしら?」

「ぜひウィリアム様と踊りたいわ〜」

ウィリアム・メレディスってあのウィリアム?胸が高鳴る。大人になったウィリアムはどんな人になっているんだろう。

(でも、ウィリアムは私のことなんて忘れてるよね)

しばらくすると音楽が鳴り始めた。貴族の人たちが次々と踊り出す。シャノン、早く帰って来て〜!