逃げ道を探すには遅すぎた

「正直、貴族の舞踏会よりも雫とデートしたいぜ」

「ハァ!?ダ、ダメだからね!!ちゃんと出席しなきゃ!!」

シャノンが私のセットした髪に触れる。大きな手が触れてどこか擽ったい。シャノンの目には熱がこもっていて、私は目を逸らした。

馬車で会場まで向かう中、貴族について教えてくれた。貴族の中にも侯爵や子爵など様々な爵位があり、貴族の中にも上下関係があるのだという。そして爵位を継ぐことができるのは長男だけ。貴族の世界も大変そうだ。

舞踏会の会場に着くと、先にシャノンが馬車から降りて私に手を差し出す。

「どうぞ、お姫様」

「あ、ありがとう……」

未だにこういうのは慣れない。シャノンの手を取って会場の中へと入る。一歩足を踏み入れれば、そこには煌びやかな世界が広がっている。シャンデリアに豪華な料理。オーケストラに着飾った人たち。別世界に迷い込んだみたいだ。

「うえっ。人酔いそうだ。……雫、ちょっとトイレ行って来るからここ動くなよ」