逃げ道を探すには遅すぎた

シャノンは執筆の手を止めて自室から出てくると、手紙の封を破った。そして中に入っていた紙を取り出してため息を吐く。

「雫、これはただの手紙じゃない。貴族が主催する舞踏会の招待状だ」

「舞踏会って貴族の集まりでしょ?どうしてシャノンが?」

「どうやら主催者のオーガスト卿が俺のファンらしい」

そうなの、気を付けて行って来てね、そう言おうとした私だったが、その言葉を遮るかのようにシャノンは私の肩に手を置いた。

「舞踏会とあるし、俺の踊る相手は雫な」

「えっ!?」

こうして、私たちは貴族の舞踏会に出席することになった。



舞踏会当日の夜。私はシャノンと馬車に並んで座っていた。シャノンはいつもはだらしない格好だけど今日はちゃんとした服を着ているし、私もシャノンに買ってもらった青いドレスを着ている。

「ハァ〜……。本が売れるのはありがたいけど、こういう場に呼ばれんのはな〜」

「嬉しくないの?」

シャノンはため息を吐きながら遠い目をする。よほどパーティーで嫌なことがあったんだろうな。