逃げ道を探すには遅すぎた

「本が売れてるし問題ねぇだろ。家事さえしてくれたらいいぜ」

シャノンはそう言ってくれているけど、生活費を一円も支払わないなんてモヤモヤしてしまう。この国で生活するために下着や服を買ってもらったし。あっ、この国のお金の単位は円じゃなかった。

この時代のお金の単位は複雑過ぎて、シャノンと暮らし始めて数ヶ月経つけど未だに慣れない。日本ではお金の単位は円だけなのに、十九世紀イギリスの単位はポンドやらシリングやら多過ぎる。なので買い出しはシャノンと一緒だ。

「一人で買い物に行けるようになるのはいつになるやら……」

窓を拭きながらため息を吐いた私だったが、玄関のドアのベルが鳴らされたことで我に返る。お客さんが来たみたいだ。

「は〜い」

ドアを開けるとそこにいたのは郵便配達員さんだった。「ハーヴィーさんにお渡しください」と便箋を渡される。ドアを閉めた後、私はシャノンの自室のドアをノックした。

「シャノン!シャノンに多分手紙かな。届いたよ〜」

「手紙?」