逃げ道を探すには遅すぎた

断ろうとした瞬間、口に指が当てられる。シャノンはニッと笑っていた。

「わかってるよ。俺のこと、まだあの時の小さなガキにしか見えてねぇんだろ。これから本気で振り向かせるから、覚悟しとけよ」

「シャノン……」

何もない私をこんなにも想ってくれているんだ。そう思った刹那、ふわりと体が浮く。シャロンに抱き上げられたからだ。

「シャ、シャノン!どこに行くの!?」

「ベッド。もう寝ようぜ〜。ちなみにベッドは一つだけだからな」

「な、なら私はソファで寝るから!」

「体痛くなるからやめとけ」

暴れたけれど結局逃げられず、ベッドに放り込まれた後はがっちり抱き締められてしまった。恥ずかしくてシャノンの方なんて見れない。そんな私に満足げにシャノンは「おやすみ」なんて言う。

私の心臓は朝まで持つのだろうか……。



それから私はシャノンと暮らすことになった。シャノンの仕事は推理小説家。執筆の最中は家事に手が回らないと言われたので私が家事をしている。

本当はきちんと仕事を見つけたいところだけど、階級制度のせいで東洋人の得体の知れない女にできる仕事はほとんどない。