逃げ道を探すには遅すぎた

たまたまそばを走っていた辻馬車(現代でいうタクシーのような馬車)に乗り、私はシャノンの住む家に向かった。



シャノンの家はアパートみたいな建物だった。でも古い建物じゃなくて、赤煉瓦がどこかおしゃれ。

「ここ、俺の家。大家さんが風呂沸かしてくれてるから入って来い」

部屋に入るとシャノンはお風呂場に案内してくれた。でも雨で濡れてしまっているのはシャノンも同じだ。

「シャノン、悪いよ。家主よりも先に入るなんて申し訳ないから……」

「あ?お前に風邪引かれたら嫌なんだよ」

「私だってシャノンに風邪引いてほしくないよ!」

私がそう言うと、シャノンが私に近付いてきた。シャノンの骨ばった大きな手が私の顎を持ち上げる。

「なら、一緒に入るか?」

「は、入るわけないでしょ!」

私がお風呂場の中に逃げるように入ると、扉の向こうから笑い声が聞こえた。ちょっとムカつきながら服を脱いでバスタブの中へ。温かいお湯の中に入った瞬間に心がホッと安堵するのがわかった。私、シャノンにもう一度会えたんだ……。