逃げ道を探すには遅すぎた

「あんた、ひょっとして……」

男の人に肩を掴まれた。そのまま顔をジッと覗き込まれる。男の人の瞳が潤んでいく。

「えっ、あの、大丈夫ですか?」

私が戸惑いながら声をかけると、男の人はハッと息を呑む。そして口を開いた。

「俺のこと覚えていないのか?もしかして俺らと会う前の雫なのか?」

「どうして私の名前……」

呟いて、気付く。この青い髪と青い目。身長がずっと高くなって、声も変わって、大人の男の人になっているけど、もしかしてーーー。

「シャノン?」

私が名前を呟くと、強く抱き締められた。私の頭に触れている手は微かに震えている。

「雫、やっと会えた!ずっと会いたかったんだ!」

「シャノン……」

シャノンの声は震えていた。私は彼の背中に腕を回し、子どもを慰めるように撫でていく。

「大丈夫。私はここにいるよ」

「……ああ。とりあえず、俺の家に行こう」

やっと体を離された。シャノンの目は少し赤くなっている。だけど笑顔だ。笑い方は子どもの頃の彼と変わらない。私も笑顔になる。