逃げ道を探すには遅すぎた

「お嬢さん、ワシに何かお恵みを……」

「ひっ!」

話しかけてきたのは、ボロボロの衣服を纏ってガイコツのように痩せた老人だった。思わず悲鳴を上げて逃げてしまう。おかしい。天国にホームレスなんているわけがない。

どこなのかわからないけど、ただひたすら走る。すると大通りに出た。通りの道には馬車が何台も走っている。馬車なんて生まれて初めて見た。おまけにお店や人も多い。

ジロジロと視線を感じながら歩く。すると、店先に新聞が売られているのに気付いた。新聞に書かれていたのは英語だ。しかし、それよりも驚くことがあった。

「1879年!?」

およそ二百年前だ。指先がスッと冷たくなっていく。思わずその場に座り込んでしまった。こんなこと、考えたくない。考えたくないけどーーー。

「私、タイムスリップしたんだ……」

死んで天国だと思っていたけど、違うみたいだ。ここは十九世紀のイギリス。しかも私のところに来たシャノンやウィリアムがいた年号じゃない。