逃げ道を探すには遅すぎた

『ここで神様にお願い事を心の中で言おうね』

お参りの仕方を説明すると、ウィリアムとシャノンは早速手を柄杓で洗い始める。私も手を洗い、賽銭箱に入れるためのお金を二人に渡した。

お賽銭を入れてお参りをする。手を合わせて目を閉じながら、お願い事を心の中で何度も呟く。最低なお願い事を神様は叶えてくれないかもしれない。でも、私が今一番願っていることはこれしかない。

(この二人ともう少しだけ一緒にいたいです)

こんなにも毎日が色付いて楽しいなんて知らなかった。シャノンとウィリアムがくれた宝物だ。

目を開ける。左右を見れば二人はもうお願い事は伝え終わっていたようで、私をジッと見上げていた。

『ごめんね。お願い事何にしようか迷っちゃった』

嘘を一つ吐く。ウィリアムは『お願い事は一つしか頼めませんし、迷いますよね』と微笑んだ。八歳なのにこんなにも気遣いができるなんてすごいなぁ……。

『雫、腹減った。何か食おうぜ』

シャノンが手を引っ張る。それをウィリアムが注意するものの、彼のお腹も音を立てた。真っ赤になるウィリアムの頭を撫で、私は声をかける。