逃げ道を探すには遅すぎた

『二人とも、今日はアルバイトがあるからお昼は冷蔵庫に入ったものを電子レンジで温めて食べてね』

私がそう言うと、二人は大きく頷く。文明の機器たちをシャノンもウィリアムも使いこなしている。この時代はボタン一つで解決しちゃうから改めて便利だ。二人の時代なんて洗濯機すらなかったんだから。

ご飯をおいしそうに食べる二人を見ていると、私の心がポカポカと温かくなっていくのを感じる。こんな気持ちになるのは初めてだ。誰かと食べるご飯がこんなにおいしいなんて、昔の私は知らなかった。

「この家に来てくれてありがとう」

日本語で呟くと、キョトンとした顔で二人はこっちを見る。すぐに『何でもないよ』と返して味噌汁に口をつけた。

シャノンとウィリアムを元の時代に帰すため、タイムスリップについての書籍を暇さえあれば読んだりしている。でも帰れる方法は未だに見つかっていない。二人がいなくなるのは寂しいけど、十九世紀にシャノンとウィリアムは家族がいる。

(きっと、温かい家庭なんだろうな……)