逃げ道を探すには遅すぎた

ウィリアムとシャノンがいた時代のイギリスは、産業革命で大きく発展した黄金期だ。世界中に植民地を持ち、豊かな国となった。でも光があれば闇もある。

ウィリアムとシャノンの時代のイギリスは階級制度と呼ばれるものがあり、生まれた家の格と血筋で一生涯の身分が決まってしまう。身分によって職業の選択や婚姻の自由が制限され、命に優劣が付けられている状態だ。そんな状態では差別しか生まれない。

(すごい時代からこの子たちは来たんだな……)

ニヤニヤと笑うシャノンと恥ずかしそうにするウィリアムを見て思う。ちなみにシャノンは労働者階級でウィリアムは貴族階級だ。本来なら、こうして一緒にご飯を食べることなんてない。

『雫、おいしいご飯をいつも作ってくれてありがとうございます』

『雫の飯、すっげえうまい!隣のワーグナーのばあさんも見習ったほしいくらいだぜ』

ウィリアムは貴族らしくいつも上品に食べる。シャノンは子どもらしい感じ。二人ともお箸なんて使ったことないのに、使い方を教えたらあっという間に使いこなすようになってしまった。