逃げ道を探すには遅すぎた

『あ、ありがとうございます……』

『雫〜！俺の口元にもソースついてね？』

恥ずかしそうにするウィリアムの隣で、シャノンが大きめの声で言う。シャノンの口周りにはさっきまではなかったはずのソースがベッタリついていた。普通に食べててこんな付き方する？

『シャノン、邪魔しないでください』

『は？邪魔してねぇし。どこにソースついてるかわかんねぇから雫に拭いてもらうだけだし』

口を尖らせたウィリアムに対し、シャノンはニヤニヤと笑う。私は『シャノン、口吹くから』と正面に座る私の方を向かせた。こうして見ると、二人とも顔立ちが整ってるな〜……。将来はすっごいイケメンになっていそうだ。

こうして、不思議な同居が幕を開けた。



十九世紀からタイムスリップをしたシャノンとウィリアムと暮らし始めて早半年。三人での暮らしにすっかり慣れてしまった。

朝の六時。目覚ましが鳴ると同時に起きる。朝ご飯を作るためだ。私一人なら不摂生な生活でも大丈夫だけど、成長期の子どもがいるのだから栄養を考えた料理を出さないといけない。