──彼女の周りには、“可愛い”という言葉が常にまとわりついていた。


顔の造形も小さすぎない身長も小動物みたいな仕草も、目を線みたいにした気の抜けた擬音が付きそうな笑い方も、人の目に映る顔の角度まで、全て。全てが“可愛くて”、俺には嘘っぽく見えて、ひとつも可愛くなかった。


あの当時の俺は、羽山柚果の被った仮面に対して可愛いと思えるほど、人に対する興味関心も高くなかった。




……果たして、“再会”なんて聞こえのいいワードが俺達の関係に当てはまるかは不明ではあるが。大学2年、本当に偶然、たまたま、羽山柚果──ゆずと再び顔を合わせることになった。



「ゆず」という呼び方も「瑛くん」という呼ばれ方も、もう何年もしていなかったのに自然と口から飛び出していた。まるで昨日まで会っていたかのように。



考えるより前に、脳が、横に座ったその女がゆずだと認識していた。