「俺に限った話じゃねぇと思うよ?」
救急箱を持って立ち上がった新次郎は、座り込んだままの私を見て意地悪く笑った。
「義理と人情だけじゃ、食っていけない時代だからね。それなりに汚れ仕事もいっぱいしてきたけどさ、俺が特別ってわけじゃねーんだわ」
ヤクザの世界の話なんて、テレビドラマや映画なんかでやってるのをサブスクの動画配信サイトで一回か二回観た知識しかない。
どこまでが現実社会で行われているものなのか分からないが…きっと創り物の世界なんかよりもっと恐ろしい世界を彼は生きているのだろう
「若頭も、俺と同じ側の人間だってこと…忘れんな?」
「………ん?」
─…っえ…なに?そんな話だったっけ…?
「推しだ、とか言って騒いでるうちは目を瞑ってやろうと思ってたが─…若頭を恋愛の対象として見てんなら、全力で止める」
「なんでっ…そんな意地悪ばっかり、」
「どっちが”悪”なんだろーな?恋愛がしたいって腑抜けてるお前を止めようとする俺か…許嫁が居るのにお前を囲ってる若頭サマか。」
「分かんないよ、新次郎は…悪い人なの?」
意地悪ばっかり言ってくるかと思いきや、優しい一面をみせてきたり─…分からない。本当はとても悪人で仁睦さんを裏切ろうとか考えてる極悪人だったりするのかな?
……どっちにしても、私には分からないことだ
分かっていることといえば、ただ一つ、、



