額にあぶら汗が滲み始めた頃、大きな交差点に差し掛かった。見慣れた道─…もうすぐ帰れる
そう思いながら震えそうになる手をギュッと握って拳を作った時だった
「…っあ、すみません!!止まりますっ!!」
急に前の車が停車でもしたのか…慌てて急ブレーキを踏んだ剛田さん。しっかりシートベルトを締めていたものの、それでも身体が前のめりになり前方の助手席に軽く頭をぶつけた。
その瞬間、フラッシュバックのように浮かんだ兄の顔。何度も何度も呼び掛けてくれた声─…
「………にぃにっ、」
焦ってドアノブに手をかけ、なんの躊躇いもなくドアを開いた。しかし既に走行中だったみたいで前方の運転席から剛田さんの叫び声が飛んでくる。
「お嬢っ…?!何やってんすか?!死にますよ?!早く閉めてくださいっ!!」
交差点に侵入しながらも速度を減速させた剛田さん。しかしもはや今の私には彼の言葉など耳には入ってこなかった。
「…危ないっ!!出ちゃダメだっ!!!」
剛田さんの怒鳴り声にも近い叫びを聞きながら、迷うことなく車の外へ飛び出した。ほぼ停車していたも同然の車から降りることは簡単で…少し転んでしまったが─…その程度。早くこの場所から離れたかった。



