「……お願い、しますっ」
緊張しながら、後部座席に乗り込んだ私に剛田さんはミラー越しに優しく笑いかけてくれた。
「遅くなり、申し訳ありません…なんせ突然のことで……」
気を使って話し掛けてくれて居るのは分かるが、出来れば今はそっとしておいて欲しい。
10年以上、もう車には乗っていなかった。久しぶりに乗る車がまさか極道の送迎係が運転する車になるとは…誰が予想出来ただろうか。
「……若頭が、とても心配されてました」
”若頭”というワードが聞こえてきて、剛田さんのことをミラー越しに凝視してしまう。
「妹の行方が気になる、っと…とても心配なさっていて─…自分がお迎えにあがることになった時も”無事に連れて戻らないと殺す”とまで言われましたからね…」
仁睦さんってば─…そんなに私のことを、、
「あ…新次郎の兄貴にも”アイツは乗り物酔いしやすいらしいから安全運転で頼む”っと釘を刺されました。」
乗り物酔いが原因で乗らないと信じ込んでいる新次郎が少しだけ可愛く思えた。



