極道の推し活、始めました。〜クールな若頭は童顔女子大生を寵愛して離さない〜



「まっ……前が見えませんっ、」


「ふっざけんな……とりあえず停めろ、、」



急ブレーキが掛けられた車に、後続車両からのクラクションが四方八方から飛び交う。私の腕を掴んで車を降りようとする男の手を振り払い、目を閉じて…ただ20秒過ぎるのを待った。



煙が充満する車内で目を開ける勇気なんて私にはない。20秒待てばここから出られるって新次郎が言ってた……あと、少し。ごー、よんっ…さん、




バンッ…と割れるような音と共に近くのドアが開かれた気配を感じた。目を閉じて両手で耳を塞いでいても感じる人の気配。



「─…ゼロ」



っと呟いて、耳を塞ぐ私の両手を掴んだのは─…



「二十秒経った─…よく頑張ったな、英里」



泣き顔に濡れた私を見て優しく微笑んでくれる…大好きな推し、仁睦さん。




後ろでワーワー喚いている男たちに目を向けることなく私を車の外へ出してくれた彼は、すぐ隣に停まっている見慣れた車に乗るようにと目配せをしてくる。




未だに窓やドアから煙が出ている車は、おそらく故障車だと周囲に思われているらしく他の車両たちは避けるようにして少しずつ進んでいくのが視界の端の方で見えた。



「……待てよっ、これで済むと思うな?こっちにも考えが」


「同業者として分かる部分もあったから”返せ”って…直接俺に言ってくればすぐに渡してやるつもりだった」



仁睦さんは私のことを背に隠しながら、近付いてくる男に内ポケットから取り出したあの例のカードを手渡した。


西園寺兄弟襲撃事件のときから私ではなく仁睦さんが所有していたそのカード。


手元にソレが戻ったことに、男が安堵した表情を浮かべたとき、



「まぁ……その中の情報は全て、リークさせてもらったけど。」



なんて、驚きの発言をした仁睦さんはそれ以上何も言うことはなく私のことを車の中に押し込んだ