「…は?何だよ、乗り物酔いするタイプ?ここで吐くんじゃねぇぞ」
車の中で嘔吐されるのが余程嫌だったのか、少し窓が開かれる音が聞こえて、風が髪の毛を揺らした。
「……っうぅ、気持ち悪いっ…吐く、」
「っ、待て……ちょ、窓開けろって!」
どうやら窓が全開にされたみたいで…後頭部を雑に掴まれ、窓の外に頭を突き出された。その隙に自由のきく手を使って目元を覆われていた布を外して視界が光を取り戻した時だった。
突然、目の前にオートバイが一台…滑り込むようにして背後から割り込んできたかと思うと、私たちの車の隣を並走し始めた。
徐々にクリアになっていく視界の中で、よく知った人物がこちらを見て意地悪く笑っている。
「しんっ、じろ…」
「よぉ、クソガキっ!テメェ俺の迎えを放棄して逃亡するとはいい度胸してんじゃねぇか!……いいか、英里。絶対に助けてやるからあと少しだけ耐えろ─…って、コレはお前の大好きな推しからの伝言な?俺はそんなことこれっぽっちも思ってねぇから勘違いすんな?」
この状況でよくそんな可愛げのないことばかりベラベラと語れるな…と思いつつ、いつもより余裕のなさそうな彼の表情を見れば…私を安心させる為にワザとそんなことを言っているのだろうと想像がつくから……つくづく、いい人だなぁと思う
「くっそ…早すぎるだろ、なんでバレたっ?」
焦ったのか、車の中で慌てたような声を出す男たちに髪の毛を引っ張られて車内に身体を戻された
─…その時、閉まり始めた窓に向かって新次郎が何かを投げ入れた。
「英里、大丈夫だ……秒でそこから出してやるからっ…目ぇ閉じて20秒数えて待ってろっ!!」
っという叫び声が聞こえた直後、車内に煙が充満し始めた。おそらく新次郎が投げ入れた何かがソレを放っているのだと思われるが─…これはマズい。



