ノートの話を杉田さんにしてから、数日が経過しました。
 誤解も溶け、心に抱えるストレスも解消されると、何もかも楽しい気分です。
 
 自分に嘘をつくのは止めよう、これからは顔を上げて生きよう。
 そんなことを思えるように、なっていました。
 
 先日、石井さんに頂いたワンピースを着てきた理由を森川さんに話すと、洋服が安く購入出来るお店を紹介してくれたので、今日は休日ということもあり、そのお店に洋服を買いに出かけていました。

 思っていたよりも安く購入出来、とても嬉しい気分です。
 帰りの電車内では時折袋の中を覗き込むほど、嬉しさが隠しきれない状態です。
 最寄りの駅に着くと、駅のホームは人でごった返していました。

「なんの騒ぎだろう?」

 電車からホームに降りると、そのことの会話する声が聞こえてきます。

「男の人が、怪我したみたい」

「救急車が来るなんて、よっぽど大きな事故だね」

 人が集まる方向を見ると、その群れの中にケガ人を運ぶ救急隊の人も見えます。
 搬送を優先するため、またそれを、心配そうに見守る大勢の方達もいます。
 周りの人たちの足取りは自然に、ゆっくりになっていました。

 私は駅からすぐには出られないと思い、人のいない改札口方面から反対側に移動すると、ノートを取り出ししゃべりかけていました。

「ミーコまだ駅から出られないみたい、ひょっとしたら、ピーポーピーポーいるかも」

 ミーコは頼もしい顔をして答えます。

「わかった、気をつける」

 そう話し、拳を握りしめていました。
 数分後、救急車のサイレンの音が聞こえます。
 どうやら病院に向かうようです。

「ミーコごめん、ノート閉じるね」

 ノートを閉じた後、抱えるように持ち、サイレンの音が聞こえなくなるまで待ちました。
 待っている間、ノートからミーコの変な声が聞こえます。

「あーーーーーー」

 なんだろう、この声?