「その第一声やめろ。心臓に悪い」
「だって、ごめんなんだもん」
「さっきもそうだけど、俺に後ろめたいことあんの?」
ないこともないけれど……。
そういう意味で謝ったわけじゃない。
用を押しつけてごめんなさいの気持ちで言ったから、首を横に振る。
「じゃあ謝罪から入るな。勘違いする」
「わかった」
たしかに涼くんの気持ちを思えば、「ごめん」のひと言で済ませるのは不適切だった。気をつけよう。
「で、話はできた?」
「うんできた」
少なくともわたしは。
エレベーター前で恭くんに出くわしたとき、ダメだと思った。
涼くんと付き合っているのを、うやむやに知られるのはダメだって。
ちゃんと自らの口で話さないといけないと思った。だから、涼くんの手を離して恭くんを選んだ。
そして、話したかったことは伝えられた。
「よかったな」
わたしの返答を聞いた涼くんは、待ち人がやってきて満足したかのように腰を上げた。



