どっちかを優先したいわけじゃない。
ファンとして恭くんを応援して、ひとりの女子として涼くんと付き合う。
そんなに難しいことじゃない。
けれど、恭くんがそれを許してくれないなら、わたしが涼くんを選んだことは否定できない。
「幼なじみをとられる気持ちわかる?」
わたしは、振り返りつつ恭くんを押し返した。
「涼くんも幼なじみだよ」
そうして今度こそ部屋を飛び出した。
玄関には涼くんのくつがあった。
帰ったわたしを出迎えたのはお母さんで。
「郵送、涼くんに押しつけたんだって?」
「涼くんもう帰ってるの? どこ?」
「お兄ちゃんの部屋」
お兄ちゃんの部屋のドアをノックして入ると、まるで待ちかまえていたかのように、なにもしないでベッドの端に腰をかける涼くんがいた。
「おかえり」
「ただいま。帰るのはやいね」
「伝票貼ってあったし、着払いだったから」
「そっか」
わたしは涼くんの隣に座った。
「ごめんね」
と、謝る。



