なんで恭くんがいるの。居て悪いわけではないんだけど、タイミングってもんがある。
これはほんと最悪な……最も邪悪なタイミング。
なるべく目を合わせないように、ドアの前に立ちふさがる恭くんの横を通りぬけようとして──けれど、動きを止める。
「待って」
背後からもう片方の腕をとられて、恭くんに阻まれてしまったから。
「なに?」
と答えたのは、涼くんで。
わたしはわずかに視線をうしろに移す。
「…………」
恭くんは、見たことのないような険しい顔をしていた。
眉根に色濃くしわが現れていて、怒りとも困惑とも受けとれる表情。
しかも、涼くんの問いかけに無言で応えるから、今の恭くんを言葉にするのは難しい。
ただ、恭くんがなにに対してその表情を見せるかはわかる。
恭くんの視線は、下寄り──わたしと涼くんの手に向いている。
ああ、ダメだって思った。
まだダメだって、意気地が白紙に戻る。
「涼くん、ごめん」
わたしは、涼くんとつないでいた手を離した。



