「それで遅れたの?」
「そうだよ。こっちが迷惑を被ることもあんだな」
涼くんはまるで他人事のように言って歩きだした。
相良恭平の活動に悪影響を及ぼさないよう涼くんにお願いしたけど……そっか。逆もしかりなんだ。
恭くんが有名になっていくたびに、双子の兄弟である涼くんに余波が及ぶ。
今はだれも気にしてないみたいだけど、もっと有名になったら、ここにいる人の目が一斉に涼くんへ向くかもしれない。
今だって、わたしが気づいていないところでだれかがこっちを見てるかも……。
考えただけでも、得たいの知れないおぞましさが背筋を這った。
「どうした?」
わたしがあとを追ってこないことに気がついたのか、涼くんが振り向いた。
「なんでもない。待って」
クロノスタシスような人混みの背景に紛れる涼くんが、途端に尊いもののように思えた。



