愛を押しつけるみたいに口づけをして、相手をもとめるように舌を合わせて。
その瞬間だけはいろいろなことから開放されて、その人だけを見つめる甘い時間を過ごしているの?
たらりと、一滴の雫が頬を伝った。
これはなんの涙?
恭くんがほかの女の人とそういう関係にあるのを想像して、ショックを受けた涙?
それとも、涼くんのキスに抗えない自分への情けなさから来る涙?
「絢音。男を簡単に信用するな」
……どうして今、名前で呼ぶの?
いじわるで自分勝手で気分屋で。
でも、わたしの心配ばかりして、優しくなるときは「絢音」と名前を呼んで、ずっとそばにいる。
ひどいことをされているのに、昔の涼くんを思い出して心を預けてしまいたくなる。
涼くんの唇がわたしの口を離れて、頬、首、鎖骨へと落ちていった。
「涼くん、やめて……っ」
声が届いていないのか、壊れたおもちゃみたいに動きつづける涼くん。
その手がシャツの裾にかかったとき、部屋のチャイムがわたしたちの耳を貫いた。
涼くんが動きを止める。



