『……でも、絢音は涼花が好きなんだよね』
そう言われたのに、なにも反応できなかった。否定しなかったけれど、うなずくこともできなかったんだ。
要するにわたしは、真摯に気持ちを伝えてくれた人に話せる本心がない。
「涼花のことだけど、絢音はどうしたいの?」
バスを降りて、あらためて恭くんから訊かれる。
「……わからない」
本当に、わからない。
自分のことなのに自分の心がわからないの。
涼くんと向きあうと決めて好きになれる気がしていたのに、急に突き放されて……わたしは結局、涼くんをどう思っていたの?
涼くんのことは好きだけど、この気持ちが唯一無二の、だれも立ち入れない不可侵領域に存在する気持ちなのかわからない。
ちゃんと答えを出さないと、きっとまた涼くんを傷つける。
これまでたくさん傷つけてきたから、迷わずこうだって言える答えを出してからじゃないと動けない。
自分がどうしたいのかわからないうちは、涼くんを追いかけられない。



