いなかったからといって清廉潔白な人間になれるわけでもないのに、両手で数えきれないくらいの回数を願い、積み重ねるたびに惨めになった。
両親から「離婚する」と報告されたのは、ふたりが両想いだと知って双子の弟でいるのに限界を迎えたときだ。
別れようと思う、じゃない。離婚する、だ。
俺らが口出しする隙も与えない決定事項だった。
だったら、こっちだって自由にしてやる。
そっちも自由にやってるんだから文句ねぇだろ。
そうして家を飛び出し、似たような人種の知人とつるんでいるうちに、S地区が社会とつながる唯一の場所となっていた。
他人に干渉されるのを嫌い、仲間だろうと干渉するのを避ける、あの街の妖艶な匂いは正直、今でもたまに惹かれるところがある。
腐った世界だけど、バカみたいに美しい世界で生きようとするよりも楽だったから。
でも、あの世界に戻ろうとは思わない。
全神経が麻痺するくらい痛感したあのとき、俺は気づいた。



