ふたりが双子である理由


相変わらず窓の外を向いていたおれの視線は「次、停まります」のアナウンスが聞こえてきて車内に移る。


宣言どおりに次のバス停でバスが停まり、前方の下車専用ドアだけが開く。ボタンを押した老人は停まったのを確認してから立ちあがり、精算機の前で財布を開いた。


ごめんなさいね、ともたつく老人に、運転手が「大丈夫ですよ」と声をかけている。


そこでようやくおれは振り返った。


絢音、と音にはしなかったけど口パクで名前を呼び、手を伸ばした。絢音の腕をつかみ引き寄せ、自分自身はわずかに身を乗り出して、彼女の唇に自分のそれを合わせた。


熱いコーヒーカップのふちに口をつけるようなキスだった。


熱さから反射的に逃れるようにすぐに唇を離し、何事もなかったかのように体を前に向ける。


「好きだったよ。ずっと」


今まで何度も口にして伝えてきた。今までも重くて真剣だったけど、今ほど苦しく感じることはない言葉がするりと口を衝いて出た。