おれは前を向いた。
「してない」
と、ひと言。嘘をついた。
──とは、思っていない。
配信停止が発表されたあとに、恋人になったと公表したカップルはいたけど、おれと望愛はなかったことにした。
はじめからなにもなかった。
だれとも付き合ってない。
始まってもいなかった。
そういうことにした。
だから、真実を伝える必要なんてない。
これは要するに、最後のあがきだ。
真実を隠して誠実な男を演じることで、絢音にそう思わせようとする。嘘じゃなくてあがき。
どうしようもないところまで落ちた男の唯一生き残る道だ。
「もともとおれは知名度のために参加したって言ったよね」
「そう言ってたね」
「あの番組のファンだった絢音には、舐めた動機だろうけど」
「そんなことないよ。動機より結果でしょ」
その結果も舐めてるんだけど、とは言えない。
「おれにとっては切実な動機だったんだ」



