窓の外に視線を向けると、近所の公園の入口をちょうど通りすぎるところのようで、子ども連れの家族が公園に入っていくのが見えた。
「もうずっと、ふたりで出かけるなんてしてないし、これからもできないだろうし。最後に……てわけじゃないけど、ふつうのことがしたかった」
そう答えると、うん、と小さな返事が返ってきた。
ふつうのことがしたい。
でも結局、今も人目を避けるように、帽子とメガネをして出てきた。
もうふつうのことができない。好きな子とふたりで映画を観ることも、外で自由に買い物することも、バスに乗ることもできない。
誕生日だからって特別扱いできないし、なにを断るにしても「仕事だから」ってモラハラ野郎みたいな言い訳しかできない。
そんな身勝手な人生に絢音を巻きこみたくなかったけど、一方で、絢音なら理解してくれるだろう、寄り添ってくれるだろう、という驕りが心のどこかにあったのも事実。



