わたしは振り返って、涼くんの背中に手を伸ばしたけれど、その手が涼くんを捕まえることは叶わなかった。
嫌いとか呆れるとかじゃない。
むりになった。
……なにがむりなの?
あまりにあやふやな理由。
なにを尋ねればいいのかすらわからない。
それから涼くんがうちを出ていくのに時間はかからなかった。
二日後にはもう、お母さんたちと話をつけて出ていった。
本当は引き止めたかったし、引き止めるだけの時間はあったけれど、むりだとはっきり拒否されて、わたしは「嫌だ」のひと言も言えないまま見送ることしかできなかった。
涼くんの言葉を受け入れたわけじゃない。
でも、口に出さないなら受け入れたも同然だった。
たった数か月……涼くんがうちにいたのは、三か月も満たないわずかな期間。
涼くんが家出をした三年間に比べたら、流れ星が天を駆けるくらい一瞬だ。願い事をするどころか、願い事をピックアップすることすらできないかもしれない。



