ホールは、見渡すかぎり満席だ。
そして、舞台には司会の女性と米原監督のふたりだけ。
そうした状況を窮屈に思ったのか、監督がギブアップするのは思いのほか早かった。
自己紹介もそこそこに恭くんへ目配せすると、
『じつは今日、舞台で一緒に仕事をしたことがある相良恭平くんが来てくれてます。相良くん、あがって』
映画の内容が哲学的なだけあって観客の年齢層は高めにもかかわらず、相良恭平の名前が出た瞬間に場内はざわめきを見せた。
水を向けられた恭くんは面映ゆそうに笑みをこぼし、立ちあがり、ざわざわする会場をしっかりとした足取りで歩いて舞台にあがった。
その姿が、アカデミー賞を受賞して名前を呼ばれるときの光景と重なって、思わず「芸能人だ」と声にならない声でつぶやいていた。
なにを今さらと思うかもしれないけれど、恭くんが芸能人だと実感するのはこういう人目にさらされる瞬間であることが多く、そういう瞬間って日常ではあまり訪れなかったりする。
あらためて、何度だって思うけど、芸能人なんだよなぁ……。



