会場に照明が灯り、すすり泣くような声がちらほら聞こえてきて安堵する。
よかった、わたしの涙の理由もきっと紛れてくれるだろう。
しばしの余韻に浸る時間を経たあと、中年の女性が壇上にあがった。
舞台挨拶の司会を任された市役所職員の彼女は、ハキハキしたしゃべりで簡単に自己紹介をしてから米原監督を呼びこんだ。
袖から現れた米原監督は、ジャケットに着替え、髪をセットしている。さっき会ったときはまだ変身前だったらしい。
うん、控えめに言わなくても業界人っぽい。
そんな監督に盛大な拍手が送られ、監督は照れながらもきっちりお辞儀して拍手に応えた。
おそらく試写のときも舞台挨拶があったはずだけど、あまり記憶にない。映画の内容が小難しかったうえに、出演者がベテラン俳優ぞろいで興味が湧かなかったから。
米原監督もあのとき舞台にあがっていたかな。
だとしたら、ちょっともったいないことをした。



