今となってはかわいらしい理由だけど、あのときの涼くんといったら、使えない部下にイライラする社長なみに機嫌が悪くて触らぬ神に祟りなし状態だったので、席に着いてからは触れないようにした。
「ほんと生意気だったよね」
「……うるせ」
つんと取り澄ます涼くん。その横顔が昔の小生意気な感じと重なって、恭くんとふたりしておかしくて笑った。
時間が近づいて会場はどんどん人で埋まっていくけれど、上映前の独特な空気にあてられて感じるそわそわ感がない。
それくらい話に夢中になっている。
そういえば、三人でこうして昔話に花を咲かせるのはひさしぶりな気がする。
楽しく一緒に出かけることも、映画を観たときを除けば、いつだったか思い出すのに時間がかかるくらいなつかしい。
恭くんを元気づけたくて外に出たけれど、三人でお出かけができてよかった。なんなら、わたしへのご褒美と言っても過言ではないくらいだ。
そんななごやかと断言していい雰囲気だったために、ふいにこぼした恭くんの言葉がはじめは聞きとれなかった。



