そしてわたしは、なんで知らなかったんだろう……。
自分の情けなさに頭を抱えたくなる。
本当にそうしようかと思ったけれど、「そうだ!」と監督さんが声を上げたのでかろうじてとどまった。
「──よかったら、きみも舞台挨拶に上がらない?」
ひらめいたときの人間の発する声ってのは、案外、ワンパターンなのかもしれない。
と思わせてくる監督さんの声に、どきりと胸が跳ねた。
なんか、とんでもない方向に話が進んでるような?
「そんな、ぼくなんかが……」
恭くんは謙遜するけど、監督さんはもうやる気みたい。
やる気にならなきゃいけないのは恭くんなんだけど。
「僕ひとりだと寂しいし、サプライズゲストとしてぜひ、ね?」
監督さんから手を合わせてまで頼まれると困った。恭くんは控えめに「よろしくお願いします……」とうなずいた。
渋々なのか、単なる照れ隠しなのかわからなかったけれど、監督さんが立ち去ったあとに「すごいね」と声をかけたら、
「緊張するなぁ」
と、こぼしたから、少なくとも断りきれなかったわけではないようで安心した。



