でも、そんなすごい人が、どうしてこんなところに……。
「驚きました。監督も観にいらしたんですね」
「観るっていうか、上映後にあいさつしてくれって頼まれたんだよ」
「えっ……。舞台挨拶つきなんですか?」
どういうことだろう。
上映後の舞台挨拶にこの人が登壇するなんて……。
それを許されるのは、今回の上映に尽力した関係者、もしくは映画の関係者──。
「そうだよ。知らずに来たんだね。てっきりそっちが目当てかと」
「あ、すいません。六年ぶりに上映すると知って……」
「作品が目的か。本当にこの映画が好きなんだね」
「もちろん。米原監督の映画を観て、ぼくはこの世界に入ったんですから」
そういうこと!?
この映画の監督さんだったんだ。
なら、恭くんの態度にも納得だ。
強烈に人生を変えられた作品の監督と、数年の時を経て、舞台で一緒に仕事をする。強烈に人生を変えられたことのないわたしでも、興奮してしまう状況なのがわかる。
すごいな、恭くん。



