胸がさっきからひそかに早鐘を打っているのは、“そういう雰囲気”を感じとっているから。“そういう雰囲気”に呑まれていっていることに気づいていたから。
だから、わたしはぎゅっと目をつむった。
けれど、ぶつかったのは唇ではなくて、おでこだった。
おでことおでこが、コツンとぶつかった。
「やめんなら今だけど?」
目を開ける。
でも、近すぎて焦点が合わない。
「嫌だって言ったらやめてくれるの?」
「うん」
「じゃあ、嫌…………、じゃないよ」
そう答えた瞬間、おでこにぶつかる熱が唇に移動した。涼くんの大きな両手で頬を包まれて、雨が降るようにキスが落ちてくる。
涼くんと付き合うと決めたときから、こういうことをする覚悟はあった。だって、本気で向きあうと決めたから。
それも含めたお試しだもん。だから嫌じゃない。
でも、ちょっと恥ずかしい。唇を重ねているのに、お腹のあたりから体中に熱が広がっていく感じがする。
……わかってるよ、なんて、どうして当然のように受け入れるんだろう。



