そのお金は、仲があまりよろしくなかった娘に代わって涼くんにすべて回っていたようで、だから、お金の余裕がなかったのは嘘。
でも、涼くんはそれをあてにしていなかった。
「バイトしてたんだっけ」
「まあ時間だけはあったし」
「えらいね」
「えらかねーよ」
わたしが、不良になって人が変わってしまった、と偏見を抱いていたあいだに、涼くんは地に足をつけて生きていたわけだ。それを知っていたら、再会したときにあの言葉は出なかった。
『人に迷惑かけても平気な生き方はしないで』
人に迷惑をかけても平気なわけがなかったんだ。
「涼くんは今、幸せ?」
「は?」
「今の生活にもの足りなさを感じたりしてない?」
「ねぇよ」
背中越しに会話しているわたしたち。ちらりと振り返ると、涼くんは手を止めることなく作業をしていた。
「働かないで生きていけんならそっちのほうがいいだろ」
まあたしかにね。あまりに平和ボケした今の生活に不満を抱いていたらどうしようと思ったけど、ギリギリで生きるよりも断然そっちのほうがいいに決まってる。



