ウザくアザとい麻斗くん【完】



「あー…それから帰る前に一つ告げ口させてもらっていい?」



スッキリした気持ちで、ベッドから飛び降りた俺に志帆がまだ切り札を出してくる。




『……なに?俺、ちょっと今から遊佐んとこ行かなきゃいけねぇんだわ。急ぐから、なるはやでっ、』


「三澄さんに、頬っぺを叩かれました」




──…藍ちゃん、何やってんの?


ほんと、目を離すとすぐに手を出す悪い子だよね藍ちゃんは。これから俺がちゃんと一から百まで手取り足取り教えてあげるから覚悟してよ、藍ちゃん?




「じゃ、もう早く帰って。偽彼氏、最後の仕事だよ。家の外で待ち伏せしてるヤンキー二人を何とかして。近所の人に友達だとか思われたくない。あの二人連れて早く─…帰ってよ、あっくん」




あー…ね。そーいうこと?向こうから会いに来てくれるなんて嬉しいなぁ。寝てた甲斐があったわ、おかげで力…有り余ってるし?派手に喧嘩してから─…仲直りしますか。





「─………ありがとう、あっくん」


『それは、こっちのセリフ。志帆に尽くしてた時間は…勇牙を忘れられない俺が唯一、報われたと思える時間だった。ありがとう、志帆』


「そーいうとこだよ、ほんと…ウザいね」


『嫌いじゃないでしょ?これからも宜しくね』




志帆の母親に頭を下げてから、部屋を出た。死角になっている角に影が見えたことに気付いていたけど、あえて声を掛けるようなことはしなかった。ここから先、志帆の父親と話すべきなのはもう俺じゃない─…志帆自身だから。