ウザくアザとい麻斗くん【完】



「そもそもあっくんはあの日志帆を救ってくれたのにっ…」


『いや…俺がもっと早くに駆けつけていれば』


「夫が癒したかったのは志帆の頬の傷じゃなくて心の傷。あの日好きな人を亡くした志帆の支えになる人を傍に置いておきたくて…夫はあっくんにあんな無理なお願いをしたんだと思う」




ならそれは、確かに俺が背負うべき責任だろ?




「快く引き受けてくれたあっくんに、私も甘えてしまった。間違ったことをしてるという自覚はあったけど…優しいあっくんが志帆のことをこれからも支えてくれることを私も…願ってしまった」



『……すみません、俺っ』



「でもやっぱりこんなこと、間違ってた。昨日あっくんに暴力をふるう夫のことを…志帆はとても怯えたような顔で見てた。あの子の為だと思ってたことは全然…あの子の為になんてなってなくて…ただ、押し付けてただけだって、」





再び泣き出した志帆の母親。俺としては別に今更そこまで気負いされるようなことではないと思っているし…殴られて当然のことをした自覚はある。黙って食事の席を抜け出した俺が咎められるのは…当然だって思うから。




「今でもあの子は…勇牙くんのことを好きなんだろうね。その気持ちを無視するようなことをして…本当にっ、私たちは親失格です」




子どもの為に、なんて美談かもしれないが…その為に俺を利用しようとした志帆の両親の覚悟は相当なものだったと思う。結婚すらしていない俺には簡単に理解出来ないような…そんな覚悟の上で俺にあんな頼み事をしていたのだろう





「もう、いいから。あっくんはあっくんの好きな子と…好きなように、生きてっ」




──…いいのだろうか?


俺は志帆と付き合うことは、助けられなかった勇牙に対しての罪滅ぼしだと思っていた。それを放棄して今更俺が…自由に?好きな人間と…笑って生きていくことは許されるのだろうか?