ウザくアザとい麻斗くん【完】



父親は意外にもすぐに迎えに来てくれて…私の顔を見るなり目を見開いて抱えるようにして車の中に押し込んだ。




隣で同じようにケガを負っている蓮水さんにも車に乗るように言っていたが…蓮水さんは学校に戻ると言って深々と頭を下げてボロボロになったチャリを押しながら去っていった



父を待っている間に蓮水さんと連絡先を交換していたので、動き出した車内の中で蓮水さんにお礼の言葉を送信しておいた。




「……で?昨日あれだけ私に刃向かってきた彼はどこにいるんだ?」



冷静に私に語りかけているように見える父親だが、その声色はとても低く冷たいものだった




『それはっ…』


「言えないのか?素行の悪そうな子だというのはなんとなく分かっている。派手なバイクをいつもコンビニに停めて居ることも知っていた」


『お父さん、篠宮は…』


「それでも、昨日の彼の言葉を私は真摯に受け止めたつもりだ。このままいまの学校に藍を通わせようと思ったのは彼が居るなら藍は大丈夫だろう、と。中学の時のようなことにはならないと思ったからだ」



中学の時にいじめられていたことを、私は父親に話したことは無い。知ったような口ぶりの父親に驚いて声が出せなった




「知ってたよ、知ってても気付かないフリをした。藍の面倒は全てアイツ…お前の母親がみるという約束だったから。それに子どもの揉め事に親が出て行けばもっと酷くなることもあるだろ?」




お父さんとお母さんの仲が良くないのは知ってた。基本お父さんは仕事ばかりで帰ってこなかった代わりにお母さんはいつも私の世話をしてくれていた



あの入学式の日私がバカなことをするまでは。



「藍から母親を奪った自覚はある。入学式の日病院で血だらけの藍を見た時…俺はお前の母親をひどく責め立てた。自分は仕事ばかりで藍のことなんて見てこなかったのに、アイツばかりに責任を押し付けて─…アイツが出ていって、初めて自分がいかに疎かな人間だったかと思い知らされたよ。」




正確に言うと出ていった訳では無い。たまに帰ってきている。お父さんが居ない時に…お母さんはちゃんと帰ってきているんだよ。




車が停車して…窓の外に目を向けると、そこは見慣れた自宅ではなく病院の駐車場で。




「─…また、学校で嫌なことでもあったのか?本来まだ下校時間ではないだろ?答えたくないかもしれないが、聞かせてもらう。二度も自分の子が学校帰りに傷だらけで帰ってくる姿をみるのは…親としては耐え難いものがある」




ミラー越しに、確かに私と目を合わせてそう言った父親の言葉に…涙が止まらなかった。ずっと嫌われていると思っていた。父は私の事なんてどうでもいいんだって、そう思ってたのに…




篠宮の言う通り、本当にただ…不器用なだけだったのかもしれない。昨日だって、篠宮と家に帰った時…連絡もしていないのに家の前で立っていた父親。




過去に二度、捜索願を出された時に気づくべきだった。本当にどうでもいいなら、数時間帰らないだけで捜索願なんて出さないよね。