「まさか、あいつ逃げた……!?」

「違う! 麻那人は今、真犯人を追ってる! 麻那人は逃げたんじゃない!」

 空太が言った事を、思い切り否定した光。

「ごめん……そうだよな……」

「ううん……だから、ここは私がどうにかしないと!」

 どうしたら、どうしたら、どうしたらいい!?

 用意した武器はもう、ない!

 戦えるのは、私一人!!

 焦りで冷や汗がにじみ出る。

 ステッキを持つ手も汗が出る。

 臭い、腐った臭いがまたしてきた。
 追いかけ鬼の口の臭いだ。

 二体の追いかけ鬼はギラギラと目を輝かせ、狙っている。
 このままでは、みんなが追いかけ鬼に食べられてしまう!

 そうしたらザボは、一気に力を取り戻す。

 どうしようどうしようどうしよう!!
 光は考える!
 みんなを守るために、何ができるか!!

「(麻那人と一緒に過ごした時間を思い出せ! きっと何かヒントがあるはず……!!)」

 光もみんなを背で守りながら、追いかけ鬼の前に立ちはだかっているのだ。
 
 怖くないわけはない。
 
 二匹は確実に、光を一番に喰うだろう。
 足も震える。

「でも、負けないもん!」

 麻那人――!!
 どうしたらいい!?

 ぺちゃっ……。

 追いかけ鬼の顔に付いたスライムが、体育館の床に落ちた。

 その時、ふと思い出す!

「もしかしたら、これが武器になるかも……!!」

 起死回生!
 そんな難しい言葉が、光の脳内に浮かぶ。

「光!?」

 光がひらめいたのを感じたラー。

「何か思いついたの? 光ちゃん」

 ルルもリィと一緒に勇気を出して立ち上がる。

「どうするんだ? 光!」

「みんな、私の話を聞いて……これが最後の作戦だよ!」

 こっそり、しかし力強く言った光の言葉にみんなも強く頷いた。