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 真っ暗な新月の夜……静けさが学校を包む。

 明るい昼間に、子ども達が元気に勉強する学校とは、まるで違った姿だ。
 
 いつもの教室が、ガランとして……なんだか不気味に見えてくる。

 肝だめしで用意されたお化け達が、風もないのにユラユラと動いているように見える。
 
 大人も子どももいない……誰もいないはずの校舎。
 
「追いかけられたら最後だよ♪

 逃げて走ってどこまでも♪

 追いつかれたら食べられる♪

 骨も残さず食べられる♪

 追いかけ鬼に見つかれば♪

 最後死ぬまで追いかけらーれる♪」

 麻那人の歌声。

 百葉箱の横に立っているのは麻那人だ。

 そして、かがんで百葉箱の下の部分の魔法陣を見つめた。

 麻那人が手を伸ばすと、ビリリっと魔法陣は麻那人の指先を拒絶する。

 それでも力任せに麻那人は手を突っ込むと、何かが弾けるような音がした。

 かまわずに、魔法陣の真ん中のあった水晶を取り外した。

 空気が一瞬で変わった。

 ピシッと空気に、亀裂が走ったように光は感じた。

 この暗闇のなかで、猛獣との間にあった柵がなくなってしまうような。

 確かに結界がなくなったのだ。



 ……追いかけ鬼がくる……。