「光は平気そうだね」

「へへ、魔術クラブだしね」

 怖いというよりは、あれはあの妖怪かな?
 あの悪魔かな?
 そんな興味がわいてくる。

 しかし、スーーーッッと歩く日本人形。

「あ……あれは……」

「あぁ、あれは本物(・・)だね。こういうのって本物が混ざってくるってよく言うでしょ」

「だって……結界は?」

「あの結界は、よほどな悪意をもつ大物を避ける結界だから、小者達はいくらでも入ってくるよ」

 そう言われれば……。
 ゾクッとして足元を見ると、白い手が伸びて光に触れた。

「ぎゃあっ!」

「あはは、大丈夫?」

 いくら魔術クラブでも本物にはビックリする!
 こんなのは絶対、麻那人が此処にいるからだ! 光はそう思う。

「行こう」

 つい叫んでしまった光に、麻那人は手を差し出してくれた。
 
「えっ」

「ほら、これなら怖くないでしょ」

「……うん」

 こんな事を平気でする男子は、今まで見たことがない。
 
 女子でも見たことがない。
 そう思いながらも、光は麻那人の手をとった。

 握った手はあったかくて、人間と同じだ。
 と思ったけれど……その手がどんどん冷たくなっていく。

 これはきっと麻那人が……悪魔に……なっていっているんだ。

「……これって……悪魔になってってるの……?」

「うん。そろそろかな」

 日が落ちていく……二人で『肝だめしチャレンジ完了証』をもらって体育館へ戻る頃には、すっかり暗くなっていた。
 新月の夜がくる。
 麻那人は悪魔王子に戻ったのだ。
 見た目は小学生だけど、中身はもう悪魔王子だ。

「麻那人……」

「さぁ、作戦が始まるよ」

 それでもいつもの笑顔の麻那人。

「……うん!」
 
 不安でいては負けてしまう、心は元気でいなくちゃ! と光は力強く頷いた!