昼休みは、みんなでドキマカ祭の準備で盛り上がる。
 学校と裏山の模型は紙粘土や厚紙を使って作るが、その前に設計図を土台になる木の板に書き込んだ。

「この裏山と校舎の角度……ふんふん方角……なるほど」

「麻那人……?」

「あるとしたら、この裏庭……かな」

 地図があるとわかりやすいな、と麻那人は言っている。
 何がなんだか? と思っている光に『魔術クラブ集合だね』と麻那人が言った。

 ◇◇◇

 そして放課後。
 魔術クラブ全員で裏庭にやってきた。
 
 裏庭には花壇や畑がある。

 春に植えたばかりの植物や花が、イキイキと育っていた。
 麻那人が、キョロキョロ見渡す。

「うん……あれかな?」

 みんなが麻那人の指差す方向を見ると、白く塗られて足の四本ある箱があった。

「あーあれの名前……なんだっけ……なんとか箱」

 四年生の時に習ったような、と光は思う。

「百葉箱だね」

 ルルが言った。

 百葉箱とは、気象観測をするための装置だ。
 箱の中には、温度計や湿度計が入っている。
 四年生だった時に、勉強した。

「温度を調べるの?」

「いや、これを見てごらんよ」

 麻那人が、かがんで百葉箱の下を指差す。

「あ……これは、天使の加護の紋章」

 光が言って、みんなも覗き込んだ。
 百葉箱の底に、青い絵の具で書かれた大きな紋章がある。

「ほんとだ……でもちょっと違う?」

 ルルの言葉を聞いて、空太がバッジをポケットから取り出して確認した。
 確かに百葉箱に書かれている紋章は、さらに魔法陣も組み込まれているようだ。
 
「百葉箱は通気のために隙間がある。その隙間を埋める応用魔法陣で……更にここ」

 隠すように真ん中にキラキラとした水晶のような石が設置されている。

「あ、強化してるんだね」

 光の言葉に麻那人が頷く。

「さすが光! よくわかるわね!」

 ラーが、光に抱きついた。

「その通り、この学校のみんなを守っている#要__かなめ__#だ」

「すっげー! そんな秘密があったのか! 安心だな!」

 空太が言って、みんなも頷く。
 でも、学校にこんな秘密があるなんて思いもしなかった。
 
「これを、ドキマカ祭の終わる夕方に……解除する」

「えぇ!?」

 麻那人の言葉に、みんな驚いて光も驚いたけど昨日の『ザボ』の話のあとに聞いた計画を思い出す。

「校舎に、犯人を誘い出すんだね」

「うん」

 裏山からザボは、子どもがいっぱいの小学校を見ているに違いない。