メルティ・エモーション


並大抵の努力では、両想いになれないと知った高校生の今。

それに気付いてから、あたしの朝はいそがしくなった。

なぜならあたしの神さまは、あたしが王子様と会えるのは、一日のうち、たった30分しか与えてくれなかったのだ。

可愛い髪型を研究して勇気のリボンで結び、意気込みは百点。狙うは一点。

衣替えしたばかりの制服。下は茶系のチェックのプリーツスカート。半袖のポロシャツには、胸元のポッケに校章のエンブレム。紺色のリボンを通して、襟を正す。

肩より少し長いボブカットの髪の毛で三つ編みを丁寧につくってハーフアップにまとめる。うん。上出来だ。

階段を下りると、リビングにはママがいた。この位置でも、鼻歌混じりでとてもご機嫌なのが伺えた。

「ママ、どうしたの?」

「ふみ、聞いてよ〜。今日のお弁当、ママ的にすっごくよく出来たの。お昼ご飯、期待してね!」

「本当!楽しみだなあ〜」

午前中、謎に体育が二時間あるのも、ママのおかげでがんばれそうだ。

それから、どうか贔屓目と受け取って、聞いて欲しい。

ママはすごく可愛いと思う。顔もだけど、仕草とか、表情とか。パパが毎日ママのことを「可愛い」って言いたくなるのもわかる。