「俺ね、多分、人参入りのケーキもふみが食べてって言うなら食べるかも」
「(普段、絶対に食べないくせに)」
灰慈くんのこういう所が好きだ。わたしの我慢を認めて、上手に導いてくれる。消化されたはずの感情が再び湧き出て、わたしの心を震わす。
「灰慈くん、大好き!」
「どうも」
「美味しい人参ケーキ見つけるね!」
「見つけなくていい」
「じゃあ、わたしと付き合って!?」
「ふみがあと500回好きって言ったら考える」
「簡単だよ!?好き好き好き、」
「一日一回ね」
「一日一回かあ、皆勤賞目指すね!」
「……頑張って」
灰慈くんの普通は分からないけれど、教訓をひとつ覚えた。我慢は良くない。わたしらしく一歩ずつ。きっとそれが一番の近道。
わたしと灰慈くんの、縮まらないこの距離の、たった一つの近道。



