「ねね、これってもしかして、わたしが普通を頑張ったご褒美?」
プリンをスプーンで掬いつつ、身に余る優しさの根源に探りを入れると「全然違うかな」と、灰慈くんはサラッと笑い、マグカップに口をつけた。
「違ったんだー……。でも、嬉しいからそういうことにしよう」
上機嫌になって、甘さに甘さを重ねた炭酸を啜った。心地よい冷たさが喉を伝うと、喉の奥でぱちぱちと泡が弾けてたのしい。
カチャ……と小さな音を立ててマグカップが下ろされた。
「ふみは、休日も" 普通 "キャンペーン中?」
今日も今日とて麗しの灰慈くんは微笑んだ。余力の残された笑顔だった。
余力なんて、これっぽっちもないわたしは「そうです」と頷くと、「そ」と一言だけ返してくれた灰慈くんはもう一度カフェオレを口に付けた。絵になりすぎて目に悪い。
「よく飽きないね」
「灰慈くんに振り向いて欲しいキャンペーンは常に開催中だもん」
「そう。だったら、俺はふみに、普通を望んだことはあった?」
灰慈くんの優しい琥珀色が、あたしに問いかける。
「(……されてない)」
そうなってくると、話が違う。わたしの希望と灰慈くんの望みはまた別の話だ。



