スーツ姿の灰慈くんも素敵だけど、私服の灰慈くんもとても素敵だ。灰慈くん御用達らしい、お洒落なショップに入った。カッコイイ彼氏さんですね、と言われて、「そうですよね」と言おうとしてやめた。口説くことに繋がるから、頑張って耐えて「彼氏じゃないんです」と、否定した。
灰慈くんは、別のスタッフさんに「可愛い彼女さんですね」と言われていた。否定するとばかり思っていたら「ね。可愛いでしょ」と同意していたから、とってもずるいとおもう。
灰慈くんの用事が終わると、雑貨屋に行った。すごく悩んで、ハンドクリームを買った。灰慈くんが好きな、チョコミントの香りのハンドクリームだ。
「灰慈くん、この香り、好き?」
これは好きに入らないだろうと確認すれば「腹、減りそうな香りだね」と言うので愕然とした。
その流れで香水を見に行った。「これ、好きかも」と、灰慈くんは一つを選ぶので、どれ?と覗き込むと、灰慈くんは自分の手首に香水をシュッと一振すると香りを移すようにあたしの首筋に自身の手首を擦り合わせ、『どう?』と目で訊くのだ。バニラの優しい香りを、あたしが嫌うはずがない。
灰慈くんはその香水をわたしにプレゼントしてくれた。「ありがとう」とお礼を言えば、つい、大好き、が口から逃げていきそうになり、内側に留めることを頑張った。
それからカフェに行った。
クリームソーダをひと口だけ飲んだ灰慈くんは、残りを全部あたしにくれて、カフェオレだけを飲んでいた。プリンとクリームソーダ、両方貰えたあたしは幸福で包み込まれた。
優しさの過剰摂取に、感覚が麻痺してしまいそうだった。



